怪獣が住む祇園閣
date:2025.02.09

こんにちは、清水です。
昨年の11月に京都で開催された「京都モダン建築祭」レポシリーズ。
これまで、「元成徳中学校」と「あじき路地」についてお伝えしました。
今回は祇園へ。
祇園閣をご紹介したいと思います。
祇園閣は、明治から昭和にかけて活躍した建築家・伊東忠太の設計で、東山を見渡せる望楼です。
1927年に完成しました。
伊東忠太は日本建築史を日本で一番最初に研究した学士でもあるそうです。
実はおととしの秋、同じく京都の聴竹居で、伊東忠太作の怪獣の石像に出会っています。
▶「聴竹居とご近所さん」
あの独特の世界観を持った人が設計した建物ということで、見学も非常に楽しみでした。
外観は黄色い石を積み上げた上に、寺社のような建物が乗っかっている形。
祇園祭の「鉾」をイメージしているのだそうです。
上の方には避雷針のように棒が空に伸びていて、先端に1羽の鶴が両の羽を広げている像が立っています。
入口の左右には狛犬?と思いましたが、実際はライオンだそうで、丸いフォルムが愛らしい。
両開きの扉にも装飾がなされていて、全く隙がありません。
独創性が強すぎる建物に出会うと、評価よりも冒険心が先に立つのだなぁと思いつつ中へ入りました。
残念ながら望楼の中は撮影禁止。
機会があればぜひ見てほしいです。
とにかく、こんな建物が100年近く前に日本で建てられたんだと驚きました。
内部には展望台へ上れる階段が2か所あり、右回りと左回りで昇降できるようになっています。
※見学の際は一方通行で案内されました
大人が並んで通るには少し狭いくらいの通路で、壁は有機的な形を描き、壁画で埋め尽くされていました。
壁画は敦煌(とんこう)というシルクロードの都市にある石窟に描かれたものの模写。
竣工時にはなかったもので、祇園閣の隣にお寺が移ってきてから描かれたそうです。
「仏教に関する絵で埋め尽くされた薄暗い洞穴のような階段を進む」のは、何か修行をしているような気分になりました。
伊東忠太といえばの怪獣も。
楼の入口、そして階段の途中にも、いくつか設置されていました。
照明器具になっていて、電球を抱えた怪獣の上半身が壁からにょきっと生えている、そんな恰好です。
RPGに出てくる装飾のようで面白いですが、このデザインで許されたんだとも思いました。
怪獣がおとなしくお仕事をしているようにも見えて可愛いかったです。
撮影NGだったので記憶を頼りに描いてみました。
階段を登り切ると、展望台に出ます。
祇園閣は土地が少し高くなっている場所なので、周辺の町が遠くまで見渡せました。
京都モダン建築祭のオーディオガイドによると、まさにこの景色を手に入れるために建てられたものだそうです。
この望楼の建築主は、大倉財閥を設立した大倉喜八郎。
余生を京都で過ごすため別荘を建て、そのそばにこの祇園閣を、という経緯です。
自分の人生では老後の別荘や展望台など到底実現されないように思いますが、誰かが土地の上に作ってくれたものがあれば、そこへ赴ける。
入れなくても外から見ることはできますし、街並みや景色の一部に必ずなります。
私的な計画が実現すると公的なものになりうるというのは、建築の面白さの1つですね。
祇園閣は目的も形も装飾も一般的な家とは異なりますので、体感型アトラクションのような気分にさせてくれます。
機会があれば、ぜひ訪れてみてください。
▶そうだ京都行こうスタッフブログに内観写真が載っていました
▶大雲院のHPでも詳細を読んでいただけます
▶京都モダン建築祭のページでオーディオガイドが聴けるかもしれません